当科の特徴・特色
当科は心臓大血管から末梢血管の手術まで幅広く担当し、他診療科の医師や他業種のとの緊密かつ円滑な連繋のもとに、少人数の医療スタッフではありますが、安全で確実な手術を心がけて診療にのぞんでいます。大学病院としての特徴として余病を多く持った重症症例が多く認められます。日本全国の主要な心臓血管外科施設全てが参加している心臓血管外科データベース機構による当科の手術症例全体の予測手術死亡率(Japan score)り低い死亡率(OE比0.52〜0.90)で手術が施行できました。 また、2023年度よりハイブリッド手術室が開設されたことに伴い、大動脈疾患のステントグラフト治療も開始しております。
虚血性心疾患
狭心症や心筋梗塞に対して冠動脈バイパス術を施行しています。グラフトは内胸動脈や胃大網動脈などの動脈グラフトや大伏在静脈グラフトを用いますが、特に若年者に対してはより性能の優れた動脈グラフトを可能な限り多く用いるよう心がけています。 高度な動脈硬化病変が大動脈に合併している症例や脳合併症が危惧される症例などでは人工心肺を用いない心拍動下手術も積極的に行なっています。 また、急性心筋梗塞の致死的合併症である心室中隔穿孔や心破裂などの緊急手術にも対応しています。
人工心肺非使用心拍動下手術
心臓弁膜症
大動脈弁疾患では高齢者の大動脈狭窄症が多くを占めておりますが、生体弁を用いる場合、特に若年者に対しては将来の弁劣化の際にいわゆるvalve-in-valveが可能なように大きいサイズの人工弁を用いるようにしています。 心臓弁膜症に対しては人工弁置換術が標準術式ですが、僧帽弁閉鎖不全症に対しては積極的に弁形成術を施行しています。また、心房細動を合併した症例では積極的にメイズ手術と左心耳閉鎖術を併施しています。
大動脈弁狭窄症
大動脈疾患
大動脈瘤が主な対象疾患ですが、胸部大動脈瘤対しては人工心肺を用いた人工血管置換術を、腹部大動脈瘤に対しては開腹、単純遮断による人工血管置換術を施行しています。 2023年8月からはハイブリッド手術室の新設に伴い、ステントグラフト治療も開始しており、高齢者や合併疾患のため従来の手術に耐えられない患者さんに対しても治療が可能となりました。 また、緊急手術を要する急性大動脈解離や大動脈瘤破裂など症例に対しても積極的に対応しております。
胸部大動脈瘤術
人工血管置換術後
腹部大動脈瘤
ステントグラフト内挿術後
末梢血管疾患
閉塞性動脈硬化症に対するバイパス移植術や循環器内科と協同して血管内治療(ステント留置術)も行なっております。 また、下肢静脈瘤に対しては従来のストリッピングに加え高周波焼灼術も行なっております。
右総腸骨動脈に対する血管内治療(ステント留置)
両側大腿動脈ー膝窩動脈バイパス術
診療実績
2020年からの3年間はやや低迷いたしましたが、2023年は8月からの急性期病棟の開設に伴い手術症例数も急増いたしました。特にステントグラフト内挿術は5ヶ月間で39例に施行いたしました。
年 | 先天性 | 虚血性 | 弁膜症 | 胸部大血管 | その他 | 腹部大血管 | 末梢血管 |
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2019年 | 2 | 30 | 33 | 4 | 2 | 1 | 20 |
2020年 | 1 | 22 | 22 | 1 | 3 | 1 | 9 |
2021年 | 0 | 24 | 27 | 4 | 4 | 5 | 17 |
2022年 | 0 | 18 | 17 | 5 | 1 | 10 | 7 |
2023年 | 0 | 25 | 37 | 27 | 3 | 39 | 21 |